PM2.5・黄砂対策100選

PM2.5や黄砂を吸い続けると
循環器にも大きな影響が

PM2.5と黄砂の健康被害2

 12: 狭心症

吸い込んだPM、特に粒子の大きさが小さいPM0.5などは、気道から肺に達したのち、血液中の二酸化炭素を酸素に交換する肺胞から血液に流入します。
血液は全身を回るものですから、心臓にまでPMが到達。PMに含まれる有害物質の中には血の凝固を促す働きがあるものがあり、これにより血流が淀んでしまうおそれがあります。

特に心臓のまわりを通っている冠動脈と呼ばれる血管で血流が低下すると、心臓に供給される血量が減ってしまいます。このせいで心臓が一時的に酸欠状態になると、圧迫されるような痛みや苦しさを胸に感じる狭心症を招くこともあるのです。

心臓が痛む女性

イギリスのロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine、LSHTM)での研究によれば、心臓発作を起こした患者15万4,000人を調査したところ、PM2.5に晒され続けたことで死期を早めた患者が一定数存在していたおそれが明らかになりました。

また大気1立方m中のPM2.5濃度が10μg増加すると死亡率も比例して20%ずつ増えることも判明しています。
ちなみに日本では環境基本法第16条第1項に基づくPM2.5の環境基準値は1年間の平均値が15μg/立方m以下、かつ1日あたり平均値が35μg/立方m以下です。

 13: ST上昇型心筋梗塞

PM2.5の影響はそれにとどまらないという報告もあります。
PMによって血液が流れにくくなると、冠動脈の心筋細胞が壊死。壊死部分が大きくなると心臓の収縮や拡張ができなくなり、命にかかわる重篤な状態を引き起こします。いわゆる心筋梗塞ですね。

心筋梗塞は心電図上、ST上昇型と非ST上昇型に分類されます。ST上昇型とは心臓の筋肉の壁が内側から外側まで全て死んでしまった状態であり、非ST上昇型とは心臓の筋肉の壁の内側のみが死んでいる状態。
ST上昇型のほうがより深刻な心筋梗塞であり、発症から時間が経てば経つほど命の危険が増します。発症から3時間以内に治療すれば高い確率で死亡を防ぐことができますが、それでも重篤で非常に厳しい病だと言えましょう。

ハート

アメリカ心臓協会(American Heart Association)が2015年11月に開催した米国心臓病学会議でも新たに心臓に関する報告がなされています。
1993年9月から2014年5月までの約20年間に渡ってソルトレイクシティーのインターマウンテンヘルスケア病院で心臓発作治療を受けた16,000人以上の患者を調査したところ、大気汚染が酷い日にST上昇型心筋梗塞の発症件数が増えることを突き止めました。

特にPM2.5の濃度が25μg/立方m以上になるとリスクは15%上昇することが判明したのです。

とはいえ循環器に関するPMの影響は未だ研究途上です。今後より深くその影響が明らかになって行くでしょう。

PM2.5と黄砂の健康被害3