PM2.5・黄砂対策100選

夏に発生する光化学スモッグ
今や春や秋にも要注意!

PM2.5とスモッグの違いは?

 5: スモッグとは

スモッグとはsmoke(煙)とfog(霧)を合わせた造語で、明治38年(1905年)にイギリスの医師H. A. デ・ボー (H. A. Des Voeux)が提唱した言葉です。
産業革命以前から、石炭を燃やして出る煙による大気汚染が問題となっていたロンドン。煤煙に含まれる二酸化硫黄が変化して硫酸塩となり、ロンドンで暮らす人たちに健康被害を与えて来ました(黒いスモッグ)。

日本でも黒いスモッグは明治期の殖産興業により発生がはじまり、昭和30年代にそのピークを迎えています。

昭和27年(1952年)のロンドン
▲昭和27年(1952年)のロンドン「グレートスモッグ」

黒いスモッグがあれば白いスモッグというものもあります。
これはクルマ型社会に移行した昭和20年(1945年)ごろのアメリカ・ロサンゼルスから始まったもので、工場から排出される煤煙や自動車の排ガスに含まれる窒素酸化物や炭化水素が日光と化学反応を起こして光化学オキシダント(photochemical oxidant)が発生するスモッグ。
文字通り白く霞んだスモッグであり、一般的には光化学スモッグの名で知られています。

 6: 光化学スモッグの復活

中高年の人たちにとって、光化学スモッグという言葉は耳馴染みでしょう。
昭和45年(1970年)に東京の中・高等学校の生徒43名が、体育の授業中に目や喉の痛みなどを訴えたことをきっかけに、世間にその存在が知られるようになりました。

3年後には年間300日も光化学スモッグ注意報の発令が起こるほど悪化しましたが、その後状況はじわじわ改善し、昨今ではさほどその名を聞かなくなっています。
光化学スモッグはこの世から無くなったかのように思えますが、しかしそれは大きな誤解なのです。

煤煙

東京都が発表している光化学スモッグ情報によれば、オキシダント濃度が100ppb以上の状態が継続すると認められるときに発令される「光化学スモッグ学校情報」は、平成23年(2011年)に年間19回、平成25年(2013年)と26年には28回出ています。
つまり現在でも1年間のうちほぼ1カ月間は、光化学スモッグが出現しているということです。

一旦減少した光化学スモッグが、今となって再び現れるようになった理由は何でしょうか?

 7: 光化学スモッグとPM2.5

本来、光化学スモッグは夏に発生するものでした。日射による化学反応なので、日射しが強い日に起きやすい特性があるためです。
ところが最近では春や秋にも発生することが多くなっています。

その理由として考えられる大きな原因のひとつが中国の大気汚染です。
気温が下がると日射による化学反応は減ります。しかし気温が下がって行く秋は中国において暖房用の石炭消費が増えることから、光化学スモッグだけでなく煤煙による黒いスモッグが増大して混ざり合います。この状況はいわば毒ガスです。
ガスは遠方に流れれば流れるほど拡散し、濃度は希釈されますが、それでも日本に大きな影響を及ぼします。

冬になると光化学スモッグは発生しなくなりますが、煤煙や排ガス自体は減らずに増えるのでPM2.5は増大します。

ちなみにPM2.5はあくまでも2.5μm以下の大きさの粒子という意味ですから、光化学スモッグの中にもPM2.5は含まれます。

PM2.5とスモッグ・黄砂の関係
▲光化学スモッグにも黒いスモッグにも黄砂にもPM2.5に該当するものがあります
PM2.5と黄砂の健康被害